6.9人で、1人を支える時代へ~支えられてきた経験を、未来世代へ~(株式会社第一ライフグループ 代表取締役専務執行役員グループCHRO 山口 仁史 様)
なぜ今、若い世代を社会全体で応援する必要があるのか。バブル期入社から現在まで、国内外で多様なキャリアを歩み、人と組織の変化を最前線で見てきた山口さんが、エニーに共感した理由を語る。

(インタビューに回答する山口さん)
PROJECT any(以下、エニーという)は、18歳から29歳の若者の自己実現をサポートする教育コンテンツを完全無償で提供するコミュニティだ。その活動を支えるのが、エニーのMission・Visionに共感し協賛する社会人——「個人エニーメイト」の存在である。
このたび新たに個人エニーメイトに加わったのが、第一ライフグループでグループCHROを務める山口仁史さん。
1989年のバブル絶頂期に入社し、ニューヨーク駐在、インド副社長、人事部門と、国内外で多様なキャリアを重ねてきた人事のプロフェッショナルだ。その言葉からは、いま日本社会がエニーのような取り組みを必要としている理由が見えてくる。

「6.9人で1人を支える」という現実
山口さんがエニーに惹かれたきっかけは、ひとつの数字だった。2035年、20歳以上の大人6.9人で、20歳未満の若者1人を支える——そんな人口構成へと、日本は向かっている。

「超少子高齢社会に関しては、今日もまさに報道がありました。どんどん進んでいる。その解決の一つは、若い世代が将来に希望を持てる社会に戻していくことだと思うんです」と山口さんは語る。
希望は、未来の選択を左右する。
「将来のキャリアに自信が持てないと、家族を持ったり、子どもを持ったりがなかなか成立しない。強い自信でなくていい、挑戦する意欲を持てる——そのためのお手伝いを、微力でも個人でやれないかと思ったんです」。一人の若者を6.9人の大人で支える。それは単なる人口比率ではなく、大人一人ひとりが次の世代に何ができるかを考える、ひとつのメッセージでもある。
若者を支えることは、巡り巡って社会全体を支えることにつながる。
エニーが描く未来像は、人事のプロとして山口さんが見据える社会課題と重なっていた。
時代は変わった——「答えのある成長」の終わり
なぜ「今」なのか。山口さんが入社した1989年は、日本企業が時価総額の上位に並び、誰もが成長を信じられた時代だった。
「どの会社に入っても、その流れに乗っていれば、自分も成長し、ある程度幸せな社会人生活を送れる――そんなイメージを、みんなが持っていたと思います。過去の成功体験の延長線上で戦略を立て、それをやりきれば成長できた。でも、その時代はもう終わったと思っています」
決定的なのが、変化のスピードだ。Windowsやインターネットは仕事や社会を大きく変えた。そして今、AIがもたらす変化は、それ以上のスピードで進んでいる。
「情報の流通速度が圧倒的に速くなり、それに伴って人の行動も変わる。そこにAIが加わっています。企業も個人も、過去の延長線上だけで考えていたのでは、変化についていけない時代になっています」

では、これからの時代に本当に求められる力とは何か。山口さんは三つを挙げる。
第一は、「問いを立てる力」。
「これまでは、与えられた問題に正しい答えを出す力が評価されてきました。でも、AIが答えを出してくれる時代になると、『そもそも何が問題なのか』『何を解決すべきなのか』を自分で考える力が、より重要になると思います」
第二は、「共感を得て進める力」。
「仕事は一人ではできません。立場や考え方の違う人の話を聞き、人と人をつなぎ、共感を得ながら物事を前に進めていく。これも、これからますます大切になる力だと思います」
そして第三が、「主体的なキャリア形成力」だ。
「会社から与えられたキャリアを歩くだけではなく、自分は何をしたいのか、何ができるのか、何を求められているのかを自分で考える。過去の延長線上では成長が保証されない時代だからこそ、自分自身でキャリアをひらいていく必要があります」
AIによって人の価値がなくなるわけではない。むしろ、AIを使って何を実現したいのか、ど
んな問いを立てるのかという人間の意思がこれまで以上に重要になってくる。AIは人に代わるものではなく、人の可能性を広げる存在になる。

多様性の時代に、若者が育てるべきもの
山口さんの問題意識は、所属する第一ライフグループの変革にも表れている。
新卒入社者が大半を占めていた会社は変わりつつある。持株会社では役員の約4割が外部出身者。異なる会社や業界、異なる国で経験を積んだ人材が、当たり前のように隣で働く組織へと舵を切っている。

「隣にいる人が、高い確率で自分とは違う経験をしてきた人。そういう環境をつくると、多様な意見が自然に出てきます。それを聞いて、取り入れながら仕事を進めることが当たり前になり、より良い意思決定につながる。それが多様性の大きな価値だと思います」
山口さん自身、ニューヨークで約6年間、インドで約4年間働いた。
「海外では、意思決定が非常に速いと感じることがあります。一方で、いざ実行段階に入ると、想定していなかった問題がいろいろ出てくることもある。日本とは仕事の進め方も、価値観も違います。どちらが良い悪いではなく、違う環境に身を置くことで、自分が当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではないと気づかされます」
同質性の高い組織で成果を出してきた山口さんだからこそ、その変化の重みを知っている。
こうした時代に、若い世代は学生のうちに何を育てればいいのか。
山口さんの答えは「好奇心」だ。

インターネットやスマートフォンは、見たいものをすぐに見せてくれる。便利な一方で、自分の興味の範囲だけで世界が完結してしまう危うさもある。
「本屋さんを歩いてみると、自分が知らない分野の本がたくさん並んでいることに気づきます。いろいろな人と直接会って話を聞く。海外へ行けば、現地の空気やにおい、食べ物がある。そういうものは、実際に行ってみないと感じられません」
人に会う。本屋を歩く。知らない場所へ行く。違う価値観に触れる。
「圧倒的に時間のある学生時代こそ、興味の幅を広げる絶好の機会だと思います。今の自分に役立つかどうかだけで選ばず、興味の外側へ出てみる。そこで得たものが、将来どこかでつながることがあります」
好奇心を持って、自分の世界の外側へ出ていく。それが、答えのない時代を生きていくための出発点になる。——それは、若者の挑戦を後押ししたいというエニーへの想いとも通じている。
「支えられる側」から「支える側」へ
国内外を渡り歩いてきた自身のキャリアを、山口さんは「恵まれていた」と振り返る。
良い上司、同僚、部下、与えられた仕事、そして自分を育ててくれた環境。その実感が、エニーメイトとしての一歩につながっている。
「これまでのキャリアは、いろいろな偶然が重なって今の立場があります。周囲の環境が、本当にありがたかった。だからこの年になって、自分が今度はそういう環境をつくったり、できるアドバイスをしたりして、若い人を支えることに少しでも貢献できたら、と思ったんです」

山口さんは、自身の仕事のスタイルを、前面に出て強く引っ張るタイプではないと振り返る。むしろ、誰がやるか明確ではない仕事や、組織と組織の間に落ちそうな課題に気づいたら、自分から拾いにいく。
山口さんは、それを野球になぞらえて「三遊間を拾う」と表現する。
「仕事をしていると、まだ誰も課題として認識していなかったり、誰の担当か決まっていなかったりすることがあります。私はそういうものに気づいたら、『ここに課題があるのではないか』『自分になにができるだろう』と考えて拾うようにしてきました。野球で言えば、三遊間に飛んできたボールを拾うような感覚です。必要なら人と人をつないで、周りを巻き込みながら形にしていく。振り返ると、そういうことをずっとやってきたのかもしれません」
人と人の間をつなぐ。異なる意見をまとめる。そして、誰かが拾わなければならない「三遊間のボール」を拾う。それは山口さん自身がキャリアを通じて培ってきたスタイルであり、若い世代へ伝えたいことでもある。
「若い人にも、最初から大きなことをしようとしなくていいと思うんです。目の前で誰かが困っていたら手を差し伸べる。誰も拾っていない仕事があれば拾ってみる。そういう小さなGiveを続けていると、人とのつながりができ、結果として自分自身の機会も広がっていくと思います」
与えられることを待つのではなく、自分から与える。
その積み重ねが、人を育て、組織を動かし、やがて社会を変えていく。
山口さんは、これまで多くの人から与えられてきたものを、今度は次の世代へ渡そうとしている。その先のひとつに、エニーがあった。
「企業の人事は、もちろん自社の社員を育てることが大切です。でも企業も社会の一員です。自社という枠を少し越えて、これからの社会を担う若い人たちの成長や挑戦を応援する。そういうことも、これからは大切なのではないかと思っています」
若い世代が希望を持ち、自分で問いを立て、挑戦できる社会へ。
それは一企業の人事課題であると同時に、日本社会全体の課題でもある。
2035年、20歳以上の大人6.9人で、20歳未満の若者1人を支える。その「6.9人」の一人として、自分にできることをする。
「人は、誰かに支えられて成長し、やがて誰かを支える側になる。私自身がそうだったように、培ってきた経験を次の世代に還元していきたいと思っています。」
山口さんのように、自らの経験を次の世代へ還元したいと願う社会人の共感が、エニーの活動を支えている。PROJECT anyには、そんな大人たちの想いが少しずつ集まり始めている。
プロフィール

山口 仁史(やまぐち ひとし)
株式会社第一ライフグループ 代表取締役専務執行役員Group Chief Human Resources Officer
1989年入社。東京・札幌での貸付審査業務を経て、1994年にニューヨーク駐在(約6年)、経理・総務・人事業務に携わる。帰国後は経営企画部にて中期経営計画策定を担当(11年)、福岡での支社勤務(3年)、インド副社長(2015〜2019年)、人事部門(2019〜2023年)、海外生保事業オーナー(2023年~2026年)を歴任し、現在グループCHRO代表取締役。
PROJECT any の活動にご共感いただける方へ。
個人エニーメイトとして、若い世代の挑戦を一緒に支えませんか。



